店頭ツールからみる、プロモーション業界からの循環型社会への提案
SDGs(Sustainable Development Goals / 持続可能な開発目標)が2015年の国連サミットで採択されてから早6年が経過しようとしている。この間に生活者の循環型社会への意識は高まり、各国や企業も実現にために様々な施策を打ち出している。
店頭においては、先日、食品や生活用品の容器を再利用する循環型ショッピングプラットフォームである「LOOP」が始まった。これは、繰り返し使用できるよう設計された容器などにて商品を提供し、「捨てるという概念を捨てよう!」という考えを元に、パートナー企業と一緒に循環型社会を提案する活動だ。 LOOP HP > https://loopstore.jp/
また様々な売り場で、同様な循環型社会への試みが見られる。最近、登場した施策のひとつが、バンダイによるプラモデルのランナー(プラモデルの枠の部分)を回収する「ガンダムリサイクルプロジェクト」だ。これは、バンダイナムコグループ4社共同によるリサイクルプロジェクトだ。集められたランナーは、マテリアルリサイクルやサーマルリサイクルにより再活用を行うそうだ。
ガンダムリサイクルプロジェクト > https://www.bandaispirits.co.jp/hobbycenter/recycleproject.html
P&Gプレステージも「Mottainaiプロジェクト」を始めている。これは化粧品ブランドであるSK-Ⅱスキンケアシリーズのガラスボトルを店頭で回収し、リサイクルを行うという施策である。中身の見える透明な回収ボックスは、同商品のブランドイメージも表現できている。
他にも、マクドナルドのハッピーセットのおもちゃ、ユニクロの古着、ドラッグストアでのスキンケア製品ボトル、使い捨てコンタクトレンズのパッケージ、インクジェットプリンターのカートリッジ、管球製品など、改めて店頭を見てみると実に様々な回収ボックスが登場している。
今までも店頭ツール周辺の業界では、様々なエコ活動の流れがあった。印刷のインクを大豆インクにする、PVCの使用を最低限にする、カーボンオフセット活動を組み入れた製造提案などである。しかし、どれも一過性の活動として消費されてしまった感がある。今回の循環型社会への様々な活動は、SDGsという地球規模で同じ目標を達成しようとする流れの中のものであり、プロモーション業界でも今後は必ず考慮をしていかなくてはならないものだ。
では、改めて店頭ツールに携わるプレーヤーとして我々にどのような提案ができるだろうか。すぐに行える提案として、次の三つの視点があるのではないかと考えている。
①素材の提案
SDGsへの取り組みを行っている企業は、自社製品の事だけでなく、マーケティング活動全般について見直しを行っている。プロモーションツールについても同様であり、POP広告を始めとする店頭ツールについても、リサイクル可能な素材であったり、環境の負荷が少ない素材などでの製作が求められる。企業の考えるプロモーション施策について、その仕組みだけでなく、素材の提案も付加価値として評価されだろう。
②回収ボックスなど、関係するツールの提案
起業が、商品のパッケージや商品そのものを回収しリサイクルを行うことを考えた場合、そのための回収ボックスなどが必要となる。様々な商品やPOP広告が所狭しと陳列されている店頭において、どのような形状や構造、デザインのものが設置しやすいか、使いやすいかは、今までの什器などを企画するノウハウが大いに役立つと考えられる。まだ回収ボックスなどの設置を行っていない企業については、回収ボックスの提案を行うことでSDGs活動を促すことも可能かと考える。
③仕組みの提案
店頭にて製品などの回収を行いリサイクルを考えた場合、どのように回収を行えばよいか、その仕組みを考える必要がある。店頭化を行うラウンダー部隊などがあれば、業務の一環として回収ボックスの設置、ボックス内の商品回収など、店頭周りのオペレーションを提案する可能性も出てくるだろう。
今回、POP広告の制作側からの視点にて循環型社会への提案を挙げさせてもらったが、逆に企業の方にとっては、プロモーション業界とタッグを組むことでSDGsに即した活動が可能となることも多いのではないだろうか。SDGs及び循環型社会への貢献は、企業として必須の活動であり、今後ますます盛んになる領域であろう。その時、店頭に関わる様々な企業や団体が一緒に活動できれば、実現までのハードルは決して高いものにはならないのではないかと考えている。
文・写真:向坂 文宏 氏
大手印刷会社、 広告代理店にて20年間、 家電/自動車/日用雑貨/化粧品/医薬品などメーカーを主なクライアントとして、多業種の店頭コミュニケーション施策を企画・実施。 現在は大学で教鞭を取りがら、POP研究家として店頭ツールの事例研究や、講演活動、コンサルティングを行っている。月刊販促会議(宣伝会議)にて最新店頭ツールのレポートを連載中。日本プロモーショナル・マーケティング協会参与。プロモーショナル・マーケター。VMDインストラクター。桜美林大学准教授。 相模女子大学非常勤講師。