時代と共に変化し、拡大する「男性用化粧品売り場」
時代が変わり、生活も変わると売り場も大きく変わる。最近、大きく変化をした売り場の一つが男性用化粧品売り場だ。日本初の本格的男性用化粧品ブランドと言われる「MG5」や「ブラバス」「アウスレーゼ」を展開する資生堂コーナーを思い浮かべる年代の方も多いかと思う。これらのブランドは、今でもしっかりと売り場の一角を占めており、老舗ブランドとしての存在感を放っている。
(今でも男性化粧品売り場の一角を占めている老舗ブランド)
また男性用化粧品というと、洗髪用品や整髪料、制汗剤などが主な商品であり「臭い対策」といったネガティブな状態を打ち消すメッセージが多かった印象もある。しかし、今ではスキンケアやメイクアップに興味を持つ男性も多く、購買動機も自分をより良く表現するためのポジティブなものが多いのではないだろうか。今回は、そんな男性化粧品売り場の今をレポートする。
(コンプレックス解消をテーマとした訴求も多かった男性用化粧品売り場)
① アイテム数が増えた男性用化粧品売り場
男性用化粧品はドラッグストアはもちろんの事、GMSや家電量販店、バラエティショップなど、様々な業態に売り場が作られている。ここ2、3年で特に感じているのが売り場面積が広くなったことだ。男性用シャンプー売り場も三面ある什器の床から天井まで、びっしりと商品が陳列されている。こんなにも商品があったのかと改めて驚くほどだ。またコスメ商品やメイク商品のカテゴリの存在感も高まった。
店頭を飾る展示台も様々な種類が目に付く。ギャツビーの整髪料などは、商品ラインナップの豊富さをアピールするためにブランドごとに陳列方法を変えている。丸いパッケージが特徴のヘアワックスであるムービングラバーシリーズは、カラー展開が目に付くよう種類ごとに積み重ねる展示を行っている。ヘアジャムシリーズは、六角形のパッケージが分かり易いように正面を向けて積み木のように重ねている。新製品のメタラバーは、半透明のパッケージデザインを生かした柔らかなイメージの展示台だ。同じメーカー商品であるがブランドごとにターゲットを明確にしたデザインとすることで、バラエティ豊かな売り場づくりに貢献していた。
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(ターゲットに合わせ、バラエティ豊かなカウンターPOP)
② 女性用化粧品コーナーと同様の売り場づくり
(ブランドごとに分かれた定番什器スペース)
GMSの化粧品コーナーでは、女性用化粧品コーナーと同様の売り場づくりが行われていた。90cm幅の什器につき一つのブランドが陳列され、それぞれのブランドの商品ラインナップが縦方向に並べられている。棚の中は、それぞれのブランドイメージを最大に表現するグラフィックや展示台が整然と置かれて、一つの世界観を完結させている。
この陳列の最大のメリットは商品の検索性にある。まずは横方向にブランドを探すことができ(ホリゾンタル陳列)ブランドを見つけたあとは縦方向にラインナップを探すことができる(バーチカル陳列)。男性用化粧品も、女性用化粧品と同様にブランドや商品のラインナップが充実してきたことを伺わせる事例だ。
③ カップルで買い物ができる男性化粧品コーナー
男性用化粧品が増えてきたことで、化粧品売り場内での買い物の様子も少し変わってきた。それは、カップルでの買い物シーンの増加だ。今までもカップルなどが一緒に化粧品を買う姿を見る事ができた。ただし、女性の化粧品を購入するために男性が付き合うシーンが多かったのではないだろうか。しかし今では女性の化粧品選びを参考に、男性自身も自分の化粧品を選ぶ、または男性化粧品を一緒に選ぶ、というシーンが増えている。都内のバラエティストアでは広く男性用化粧品売り場を展開させており、のんびりと商品選びが行なえる空間となっている。
また、男性の化粧品への意識が高まってきたからか、店頭ツールのデザインもスタイリッシュなものが増えてきように思う。商品パッケージも、今まではアテンション効果を期待したインパクト重視のものが多かったが、女性用化粧品と同様に洗練されたイメージになってきたようだ。店頭ツールも、それに合わせブランドの持つ世界観を表現するデザインや素材、構造になってきた。こうした売り場であれば、女性でも違和感なく男性用化粧品売り場へ同行して商品を選ぶことができそうだ。
④ 百貨店に登場した男性化粧品フロア
最後に、百貨店へ登場した男性化粧品フロアを紹介する。量販店の男性化粧品売り場は広がってきたが、百貨店へも専用のフロアが作られた。買い物客はまばらであるものの、販売員に色々と相談をしながら商品を選ぶ姿が見られる。売り場では専門スタッフによる商品の説明や提案が行われ、男性が自身のために化粧品を選ぶことが当たり前の時代になっているのだなと改めて感じた。
生活が大きく変わると新しいカテゴリ商品が企画され、それらを扱う売り場が作られる。新しい売り場には、専用の店頭ツールが必要となり素材や構造、陳列方法を用いた店頭ツールが登場する。今回の男性用化粧品売り場の変化などは、まさにそうした店頭ツールや売り場の作り方が求められ、今に至っているのだなと感じる。
この先、ジェンダーレス等の性の多様化だけでなくエシカル、少子高齢化、働き方改革、循環型社会など、様々なキーワードと共に売り場も変わっていくだろう。その時、どのような店頭ツールが求められることになるのか想像しながら次の一手を備えておくことも、店頭ツール企画にとっては重要だなと考えている。
文・写真:向坂 文宏 氏
大手印刷会社、 広告代理店にて20年間、 家電/自動車/日用雑貨/化粧品/医薬品などメーカーを主なクライアントとして、多業種の店頭コミュニケーション施策を企画・実施。 現在は大学で教鞭を取りがら、POP研究家として店頭販促ツールの事例研究や、講演活動、コンサルティングを行っている。月刊販促会議(宣伝会議)にて最新店頭販促ツールのレポートを連載中。日本プロモーショナル・マーケティング協会参与。プロモーショナル・マーケター。VMDインストラクター。桜美林大学准教授。 相模女子大学非常勤講師。
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