様々な売り場で活用される「カウンターPOP・什器」最新事情について考察
新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行とともに、様々な生活上の規制も無くなり、リアル店舗にも多くの買い物客が戻って来た。5類移行となった5月8日には、さっそく多くの売り場に賑わいが戻っており、長かった外出規制から解放された安堵感が感じられた。
(5月8日の様々な店頭の様子)
やはり買い物は実際に商品を見て、触れて、選ぶことが楽しいのだと、そんな事を再認識された方も多いのではないだろうか。店舗やメーカーも、再びコロナ禍の以前のように店頭でのコミュニケーション施策に力を入れ始めている。今回は様々な売り場で活用され、また売り場づくりに非常に重要視されているカウンターPOP・什器について改めて最近の事例をレポートしようと思う。
カウンターPOP・什器とは
店頭のカウンターや陳列什器に設置する、商品の展示や特徴訴求を行うツールである。商品をより良く見せるための演出機能や、効率よく陳列を行う販売機能など様々な目的で使用される汎用性の高いツールだ。店舗側にとっても、効率よく売り場づくりを行うことができ、また商品特徴を分かり易く説明してくれるため、重宝されるツールでもある。
その使い勝手の良さは、メーカーや店舗の間にて暗黙の了解となっているサイズにも要因がある。店舗を構成する販売什器は、多くが幅90cmのサイズだ。カウンターPOP・什器は、そのサイズの中で整然と陳列できるサイズ感にて設計されている。小型のものであれば幅30cm。中型は45cm、大きく売り場を確保できれば90cmで作られているものがある。このサイズであれば、3台、2台、1台置きと、隙間なく設置が可能だ。逆に言えは、このサイズ以外で作ってしまうと、店舗側も展示がしにくいため、使用されない可能性が高くなる。高さについては、上部に何もないカウンターへ置くことが決まっているのであれば、安全性さえ確保されれば特に制限はない。奥行きは35cm~40cm、高さは40㎝ほどだろうか。サイズの決定は、設置を考える売り場の販売什器に収まるかどうかがポイントとなる。
(上段/30cm幅の什器、中断/45cm幅の什器、下段/90cm幅の什器)
カウンターPOP・什器は売り場の形状に合わせてフレキシブルに使える構造が好まれる。例えば45cmの場合、売り場スペースが確保できるのであれば、そのまま台座を付けて独立したフロアスタンドとしても使えるものが増えている。商品の展示スペースが45cm確保されている場合、幅30cmのカウンターPOP・什器であっても幅15cmの別ツールなどを組み合わせることで、スペースを無駄なく使用することも可能だ。カウンターPOP・什器を企画する時は、与えられた売り場スペースを活かすために様々なサイズのツールを組み合わせて、スペースを有効活用できるバリエーション展開を考えることが効果的である。
( 45cm幅のカウンターPOP・什器へ台座を付けて自立型とした例)
様々な売り場のカウンターPOP・什器
この3年間の外出規制によって買い物客が少なくなっていたリアル店舗ではあるが、その間にも多くのカウンターPOP・什器が登場している。中には今までにない意欲的な企画も見られた。コロナ禍が明けた今、さらに多くのカウンターPOP・什器が登場すると思われるが、企画のヒントとなりそうな事例をいくつか紹介しようと思う。
【事例①】紙を使った複雑な造形
カウンターPOP・什器に使われる素材は圧倒的に紙が多い。コストが安価であることと、設置が容易なこととなどが理由であるが、近年ではCADやカッティングプロッター等の進化により、紙でも複雑な構造設計が比較的容易に行えるようになったことも大きい。込み入った展開図の箱や曲線を多用した構造、紙の折り目なども美しく表現できるようになり、一見すると紙とは思えないものも多い。特に最近では、展示台スペースを複雑に組み合わせたような構造のものや、美しく円弧を描いた曲面なども見られる。紙の表現の幅が大きく広がり、今後はますます造形的にも美しい紙製の展示台が増えるだろう。
【事例②】「パッケージ」を見せる展示
最近の化粧品売り場でよく見かけるのが、デザイン性の高いパッケージの商品だ。ブランドイメージが重要なカテゴリーなので当然なのだが、最近ではインスタグラムなどのSNSで「映え」のするパッケージが増えている気がしている。そうした商品を陳列する場合、パッケージの魅力を最大限にアピールするためにフェイスアウト(商品の顔となる面を手前に向ける展示)をしていることが多い。例えば丸い缶状の商品の場合、従来であれば商品を上へ積み重ねるような陳列が多かったが、最近では蓋の天面のデザインを見せるために蓋を手前に向けるように陳列している。また、カウンターPOP・什器の最前面にテスターを設置し、展示の手前部分さえ視界に入れば商品の全体像が見られるよう工夫されているものも多く見られる。こうした「映え」を意識した商品の展示方法は、最近の傾向の一つだろう。
【事例③】循環型社会へのアピール
カウンターPOP・什器の素材として紙を選ぶことは、他の素材を使用することを考えれば十分にエコに配慮したデザインである。さらに強く企業としてのエコ活動やエシカル商品であることを訴求するために、印刷箇所なども最低限にし紙のもつ素材の質感を活用する事例も多く登場している。例えば、紙の地色を基調色とし最低限の文字情報だけを印刷したり、段ボール素材やリボードの構造の一部である波板部分をそのままデザインの一部に組み込むなどだ。Z世代と呼ばれる若者世代にとって、社会にとってより良い行動に繋がるエシカル消費(商品を購入することで、社会問題の解決に貢献できること)は、特徴的な買い物行動の一つだ。カウンターPOP・什器は、こうした素材の使い方一つで、商品や企業が持つエコなイメージをしっかりと買い物客に感じ取らせることができるツールでもある。
【事例④】電源コードを上手に隠す家電製品の展示
家電量販店も最近、変化しているポイントがある。家電商品に付いてくる電源コードや盗難防止コードの逃し方だ。商品を展示するとき、どうしてもこれらコードの配線をどのように処理するかが課題となる。商品には通電して展示するものもあるため、配線コードを無くすこともできない。狭い販売什器の上で配線をどのように取りまわすかは、カウンターPOP・什器を企画する上で重要なポイントであった。
最近のカウンターPOP・什器を見てみると手前に商品訴求スペースを設け、その裏に電源コードを落とす方法が一般的になっているようだ。買い物客がよく手にとって商品確認をする理美容家電などは、複数の商品が並ぶが電源コード類を下に落とすことでスッキリとした売り場となっている。
これからのカウンターPOP・什器
以上の事例からも伺えるように、カウンターPOP・什器が進化してきた過程の一つに、店頭の限られたスペースを効率的に使うことを突き詰めてきたということが言える。カウンターPOP・什器を形づくる素材、構造、印刷方法、商品の陳列方法、訴求内容、その全てに合理的な理由があり、洗練され今に至っている。サイズについても、効率性を追求してた上での現在のフォーマットだ。今後、OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインを融合させ、買い物客の購買体験の最大化を図る考え方)と呼ばれる買い物環境の中で、店頭のコミュニケーション手法も新たな進化をしていくはずだ。これからのカウンターPOP・什器の企画には、そうした新しい購買行動をいち早く察知し、反映していくことが求められるだろう。
SNSとの連動やインフルエンサーの活用、SDGsやジェンダーレスというテーマを盛り込んだ企画など様々なキーワードが頭に浮かぶが、それらがどのような形で店頭に現れるのか、そんなことを意識しながら売場を見る事で新しいヒントが見つかるかもしれない。
文・写真:向坂 文宏 氏
大手印刷会社、 広告代理店にて20年間、 家電/自動車/日用雑貨/化粧品/医薬品などメーカーを主なクライアントとして、多業種の店頭コミュニケーション施策を企画・実施。 現在は大学で教鞭を取りがら、POP研究家として店頭販促ツールの事例研究や、講演活動、コンサルティングを行っている。月刊販促会議(宣伝会議)にて最新店頭販促ツールのレポートを連載中。日本プロモーショナル・マーケティング協会参与。プロモーショナル・マーケター。VMDインストラクター。桜美林大学准教授。 相模女子大学非常勤講師。
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