お正月から春商戦へ ~様々な催事が続く売り場の注目ポイント~
12月中旬〜年末の売り場には「鏡餅」や「しめ縄」などが並び、新年を迎える準備を感じる事ができた。店頭プロモーションに関わる方々はもちろんのこと、多くの買い物客も、売り場の変化から季節を実感することが多かったのではないだろうか。
売り場では販促カレンダーを元に、実際の季節の到来よりも早く、次の季節の準備をしている。商品の需要が最大化する時には売り場が完成していなくてはならないので、当然ではあるが、逆に言えば、事前にどのような売り場の変化があるのかを知っておくことで、店舗が行っている工夫などに気付きやすくなる。
今回は新年度の売り場づくりについて、過去の事例を元に、チェックすべきポイントや、ひと工夫されている売り方をレポートしようと思う。
① 新年の演出が華やかに行われる「デパチカ」
年始の売り場づくりとして、新年を感じさせる華やかな演出をしているのが百貨店の食料品売り場、いわゆる「デパチカ」である。特にその中でも和菓子売り場には、毎年、日本の正月シーズンならではの素晴らしいディスプレイを見る事ができる。商品の陳列方法、モチーフの選び方、色や素材の使い方など、様々な面で参考にことばかりである。百貨店にとっても、正月は稼ぎ時でもあり、日頃からのリピート客はもちろん、トライアル層の心を掴む絶好の機会である。他の業態とは全く違う、趣向を凝らした売り場づくりは、ぜひ毎年チェックしていただきたいと思う。
② 身近なスーパーマーケットの、効率的な「新年」の演出
正月の需要増に応えるための売り場づくりを行っているのはスーパーマーケットも同様である。最近では、働き方改革で、元旦を休みとするチェーン店も出ているが、重要な商戦期であることは違いない。客単価の高い高級スーパーなどでは、デパチカに負けまいと、趣向を凝らしたディスプレイを見る事も多いが、日頃からよく使うチェーンは、正月用の商品や印刷物などのPOPを利用して、効率的に正月の雰囲気を作り出している。
紅白の色を商品やパッケージに配した商品を大量に陳列し、紅白の印刷物をプライスレールやコーナーサインに配置することで、しっかりと正月の雰囲気を醸し出す。また初売りの特売企画を作ることで、買い物気分が高揚するよう演出されている。こうした準備は年末から進められており、買い物客は来店する度に徐々に変化をする売り場から、新年への期待感を高まらせていく。普段から利用することの多い量販店ならではの、買い物客とのコミュニケーションの取り方だ。
③ 豪華絢爛な「日本酒売り場」
個別の売り場として、ぜひ正月に立ち寄りたいのが、アルコール飲料売り場の日本酒コーナーだ。日本の正月には欠かせない商品として、日本酒コーナーは普段とは全く異なる豪華な装いになっている。売り場には、紅白の色にプラスして、金色を多用している演出も多く、また正月限定の金色のパッケージなども作られている。金色の表現も、ミラー紙などの特殊な用紙に印刷をされているため、とても艶やかだ。正月という期間でなければ見る事のないであろう、高価な素材と色との競演が楽しめる。
④ 売り場を盛り上げる「福袋」の陳列
様々な正月仕様の売り場が見られる一方で、店舗には潤沢なスタッフがいるわけではなく、全ての売り場に趣向を凝らしたPOPの準備や、特別な陳列は行えない。そこで売り場づくりに一役買っているのが「福袋」のオリジナルパッケージだ。正月の買い物シーンの風物詩ともなっている「福袋」は、量販店にとっては来店を促すための重要な企画だ。また、メーカーにとっても売上や新規顧客の獲得などに重要な施策であるため、毎年、趣向を凝らした紙袋のデザインを用意している。「福袋」コーナーは、そうした紙袋をボリューム陳列するだけで、魅力的な売り場を作ることができる。「福袋」のデザインからも、普段は目にすることのない特別な世界観作りや、POP広告などのグラフィックデザインのアイデアのヒントを得られるのではないかと思う。
⑤ 新たな「催事」の提案
新春ならではの新たな需要開拓の販促企画にも注目したい。最近の新たな催事としては「恵方巻」「ハロウィーン」「ブラックフライデー」などが思いつくが、正月の店頭でも様々な企画が行われている。年末の年越しそばは、もはや国民的な催しであるが、年明けにも何かできるのではないかと、数年前より本場さぬきうどん協同組合による「年明けうどん」が提案されている。また日用品売り場でも、新年を気持ちよく迎えるための「迎春ハブラシ」が提案され、広い歯ブラシコーナーが作られていた年もあった。こうした新たな需要開拓へのチャレンジは今年も様々な企画が考えられているだろう。そうした、新しい販促企画を探してみるのも、正月ならではの店頭視察の楽しみ方ではないかと思う。
⑥「紅白」の正月から、「ピンク」の春商戦売り場へ
さて、三が日が過ぎると、売り場は早々に春商戦へと切り替わる。まだ正月気分に浸っていたいという気持ちも、否応なく日常へと戻されていく。その時に注目したいのが、売り場の色である。正月の紅白の売り場から、徐々にピンク色に染まっていくのだ。その商品は、洗剤や柔軟剤、トイレットペーパーなどの柔軟剤などの日用品から、雑貨、食品まで、様々だ。春限定のオリジナルデザインの商品もあれば、もともとピンクのパッケージであったために売り場づくりに活用されるものなどもある。まるで春の訪れよりも一足早く桜の花が咲いていくような、そんな売り場の色の変化である。どのような商品がピンク色に染まっていくのかを改めて見てみるのも面白いだろう。
⑦ 受験生の応援売り場を見て、気持ちを切り替える
正月が終了すると、売り場には節分のグラフィックや、恵方巻のPOPも増え始める。さっそく2月の商戦準備だ。
個人的には、受験生の応援売り場が作られ始めると、正月気分が抜け、日常へ気持ちが戻るきっかけになっている。きっと受験生は、年末も年始も関係なく受験勉強を頑張っていたであろう。1月中旬には大学入学共通テストも始まり、いよいよ受験シーズンの到来だ。いつまでも周りが正月気分では、受験生に申し訳ない。気持ちを切り替えて応援をしたいと思う。
年末年始は、短い期間の間に、クリスマス、大晦日、正月、と大型のイベントが続く。またその後も、節分、バレンタインデー、ひな祭り、ホワイトデー、と様々な催事が続く。毎月毎月、こうした商戦期の売り場を考えていくと、新しい年もあっと言う間に過ぎてしまいそうだ。
今年は、店頭DXというキーワードから始まり、リアル店舗とネット通販の使い分け、Z世代という新たな購買層の顕在化など、店頭プロモーションを考えるにあたり様々なテーマが登場した。目の前の買い物客の行動にも対応しつつ、大きな時代の変化もキャッチをしていかなくてはならない昨今である。新年は、どのようなキーワードが登場し、売り場が変化をしていくのか。今から楽しみである。
文・写真:向坂 文宏 氏
大手印刷会社、 広告代理店にて20年間、 家電/自動車/日用雑貨/化粧品/医薬品などメーカーを主なクライアントとして、多業種の店頭コミュニケーション施策を企画・実施。 現在は大学で教鞭を取りがら、POP研究家として店頭販促ツールの事例研究や、講演活動、コンサルティングを行っている。月刊販促会議(宣伝会議)にて最新店頭販促ツールのレポートを連載中。日本プロモーショナル・マーケティング協会参与。プロモーショナル・マーケター。VMDインストラクター。桜美林大学准教授。 相模女子大学非常勤講師。
【関連記事】
▶店舗の売上を伸ばす秘訣は「売場の鮮度」!
低コストで「売場の鮮度」を保つアイデア什器って?
https://www.links-net.co.jp/topics/news41
▶あけましておめでとうございます。紙ワザ年賀状