『紙』による大型の構造物たち
〜環境問題に配慮。エコ素材への置き換えが加速〜
年も明け、店頭では早速、新春セールなどで華やかな売り場づくりが行われている。2022年の企業のトップの抱負などを見ると、リアル店舗を非常に重要視している意見が多く見られ、そんな思いが反映されているようだ。2022年の店頭施策についても様々なテーマが挙げられている。店頭DXの進化、共感・体験ができる場づくり、多様性への対応、SDGs提案などだ。そして、そうした企業の戦略を実現するのは様々な店頭ツールだ。今回は、紙を使用した大型の構造物たちをレポートし、循環型社会への一助となる例としてご紹介したい。
あの新春の売り場の定番モチーフの素材の変化
毎年、新春の売り場へ行くと、まず目に付くのは神社の鳥居を模した大陳コーナーである。初詣の意味合いのものや、受験シーズンが本格化する中での受験生の応援などがあり、新春の売り場づくりを象徴するモチーフである。ひと昔前までは、素材としてスチレンボードなどを使用している例を良く見かけたが、この事例では全てが紙である。SDGsや循環型社会の事を考えれば、当然の素材の変化といえるが、今年の鳥居は、その造形力も高まっていることが分かるものであった。笠木や島木、貫がしっかりと並行に取り付けられており、台石の部分も安定感がある。構造として不安な要素が少なく、春先まで使用されても十分な耐久性があるのではないだろうか。笠木と島木の色が逆なのは、鳥居のパロディとしての遊び心か。
定番什器へ屋根を付け、ショールームのような世界観を
既存の什器へ装飾を施し、独自の売り場へと変身させる手法は、今までも多く行われてきた。この事例では、什器の最上段へ屋根を取り付けることで、定番売場をまるでショールームのような空間へと作り変えている。この屋根は、はめ込み式で組み立てられる紙製だ。納品時はきっと平面で送られ、売り場で組み立てられたのであろう。輸送コストを軽減させる手法も、CO2削減へと繋がり、循環型社会にとっては重要なポイントである。構造を見る限り耐久性も十分だと思われ、様々な面でエコな手法となっている。
店頭にせり出した、新しい売り場づくり
売り場の入り口に、バーを模した大型の売り場が出来ていた。木目調の外観からは本格志向の商品である雰囲気が感じ取れる。この什器、商品が置かれている部分は鉄製の台が使われているが、その周りの木目調の部分が全て紙である。高さは2メートル程であろうか。この什器を見て驚いたことは、紙製ということによる不安定さが全く感じられなかったことだ。垂直、並行がしっかりと出ているため、直線を主体としたデザインも効いている。また紙製であるため、売り場の移動なども容易であろう。前述の鳥居もそうだが、紙による造形物のクオリティは本当に高まったと感じている。
広まってきた「リボード」製のディスプレイ
消臭剤のプロモーションのため、実際の使用シーンである布団と二段ベッドを再現したディスプレイである。実際の二段ベッドよりもコンパクトな作りではあるが、それでも十分に大きく、アイキャッチとしてのインパクトは強い。これだけの大きさのものをどうやって制作をしているのかと見てみたら、素材としてリボードを使用していた。リボードとは、分厚いダンボールのような素材である。紙のみで作成されているため軽く、しかも耐久性も高く、エコ素材としても注目されている。構造によっては重量物も陳列できるので、陳列什器に使用されている例(写真1)も見かける機会が増えた。もし、この二段ベッドを鉄や木材などの素材で制作した場合、材料費、製造費、配送費は相当なものになるだろう。リボードが無かったら実現が難しかった企画であると言える。
以上のように、改めて売り場を見ると、様々な什器や構造物が紙製へと切り替わってきていることが分かる。店頭ツールを紙やリサイクル素材で製造する比率を増やすことは、循環型社会の中で、メーカーにとっても課題の一つとして挙がっている。そして、様々な店頭ツールを紙製に変えていく事が可能そうだ。
2021年は、店頭DXというキーワードの元で、リアル店舗とネット通販の役割分担を見直す年であった。それぞれの特徴が明確になってきた今、2022年は店頭ツール企画の飛躍の年になるのではと、そんな気がしている。
文・写真:向坂 文宏 氏
大手印刷会社、 広告代理店にて20年間、 家電/自動車/日用雑貨/化粧品/医薬品などメーカーを主なクライアントとして、多業種の店頭コミュニケーション施策を企画・実施。 現在は大学で教鞭を取りがら、POP研究家として店頭販促ツールの事例研究や、講演活動、コンサルティングを行っている。月刊販促会議(宣伝会議)にて最新店頭販促ツールのレポートを連載中。日本プロモーショナル・マーケティング協会参与。プロモーショナル・マーケター。VMDインストラクター。桜美林大学准教授。 相模女子大学非常勤講師。
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