この先の店頭演出、一歩進んだパッケージの可能性
最近、目立つ売場を見ると、ユニークなパッケージが並んでいることが多い。パッケージは、POP広告以上に店頭の商品近くで訴求を行うことができる手段である。もしPOP広告の設置が叶わなくても、パッケージへしっかりと商品訴求が行なえていれば、買い物客へ最低限の商品特徴を伝えることができるだろう。
一般に、パッケージの役割としては下記のものが挙げられる。
1.商品の保護機能と輸送機能
2.容器としての機能
3.ディスプレイ機能
4.他の商品との差別化機能
この中で買い物客に直接関係してくる役割は③と④だろう。この二つは、リアル店舗での商品の訴求力に大きく関係してくる。今回は、POP広告と同様に店頭での存在感を強くアピールするパッケージのアイデアに注目し、事例を紹介しようと思う。
オリジナリティあふれる形状で、店頭で目立つ
これらの写真は、冒頭の写真の売り場を構成しているパッケージたちだ。左から、商品に使用されている植物の葉をイメージしたもの、牛乳パックのような形状、ゲームセンターの筐体をミニチュア化したもの、造花のような形と、どれも商品特徴やブランドイメージをパッケージデザインのモチーフに使用している。一つひとつの商品も特徴的だが、これらが集合して作られた売場は、遠目から見ても気になる見た目となっている。商品特徴がパッケージの形状となっていると、買い物客も直感的に商品情報を感じる事ができ、店頭でのコミュニケーションも取りやすくなる。
老舗ブランドのブランド資産で、存在感を醸し出す
パッケージデザインを特徴的な形状としなくとも、老舗ブランドには長年培ってきたブランド資産を活用することで、他社に負けない存在感を醸成することが可能である。
牛乳石鹸ブランドをスキンケアクリームに活用しているのが、この売場だ。最近、若者の間で人気の牛乳石鹸の赤パッケージのイメージをそのままスキンケアクリームの缶へ使用している。
また同様に、ニベアは青色を様々な商品へ活用することで、力強い青色の空間を作り出している。
どちらも、CIカラーを最大限に生かしたパッケージとすることで、老舗ブランドならではのディスプレイや空間を作り出しており、その色のパワーには圧倒的な存在感を感じる。
POPパッケージという、新しい考え方
パッケージの訴求力に着目し、POP広告としても活用しようとする施策がPOPパッケージである。買い物客の目を引くために、特別なパッケージを作成したり、売場で目立つようにデコレーションを施したパッケージなどだ。パッケージはPOP広告の設置ができなくとも店頭には陳列される。そのパッケージとPOP広告をセットとして扱うという考えは理にかなっている。近年では、POP広告の展示会である「JPM協会展」でも、POP広告の一つとして扱われている。
キャラクターが売り場を華やかに演出するパッケージ
パッケージデザインへキャラクターを採用すると、売場は途端に愛らしい空気に包まれる。キャラクターが何体も並ぶディスプレイは、それだけで目を引かれる。同じ方向に並ぶキャラクターたちを見ていると、何だか大勢のキャラクターに見つめられているようだ。最近では、長く愛されてきたキャラクターを改めてパッケージに採用する事例も増えている。 キャラクターを採用したパッケージの売場が目立つのは、このキャラクターたちに「見られている」という感覚が、もしかしたら強い訴求力に繋がっているのかもしれない。
集まると売場が強くなるパッケージ
一つひとつはシンプルな形状であっても、店頭での商品陳列とディスプレイを意識してデザインされたパッケージは、商品が集まることで強い売場を作っている。上の画像は、梅干しのパッケージである。一つの容器に一つの梅干しが入っており、様々なラインナップ展開がされている。下の画像は洋菓子のパッケージである。1/8カットの洋菓子を8個並べると円形になる商品だが、それぞれに華やかなデザインが施してあり、商品選びが楽しい。店頭では、商品を選ぶときにこの華やかなデザインが見えやすいよう、全て正面を向けて陳列されている。どちらのパッケージも、集合陳列したときの売り場の存在感は圧倒的である。
さて、売場を引き立たせるパッケージの様々なアイデアの方向性を紹介したが、最後に、今、最も重要な考え方ではないかと思われる事例を紹介する。
社会へ向けたブランドメッセージをパッケージで体現したUZU
UZUは、2019年3月に誕生したフローフシ(FLOWFUSHI)の新ブランドである。多くのファンがいた旧ブランドからの切り替えは当時話題になったが、紙のモールド成型(パルプモールド)を使用した商品パッケージにも注目が集まっていた。世の中のパッケージに使用されるプラスチック素材については、海洋プラスチック問題を初め、環境面へのデメリットが指摘されている。UZUはパッケージ素材としてパルプモールドを採用し、高いデザイン性と環境への配慮を伴ったパッケージを開発することで、いち早くファッショナブルで環境面でも安心して使用できるブランドイメージを売場で確立したのだ。このパッケージを店頭でもスムーズに導入するためにオリジナル什器を導入し、UZU独自の陳列を行っている。
今後のパッケージの可能性
パッケージは、POP広告とともに店頭での商品訴求を積極的に行い、またリアル店舗を華やかに演出する重要な要素であることをお分かりいただけたと思う。その中で、企業が社会へ思いを伝達するための重要なメディアとしての働きをする可能性も感じていただけたのではないだろうか。SDGsが声高に叫ばれている現在、各企業はSDGsの課題解決に向けた取り組みを積極的に経営理念へ取り入れていることと思う。そうした思いを社会へ発信する一つの手段として、パッケージへ思いを込めるということも、今後は重要な考え方になると考える。
商品の最も近くで商品訴求を行い、また買い物客との重要な接点となるパッケージだからこそ、消費者としっかり向き合ったメッセージを発信する工夫には、まだまだ可能性がありそうだ。
文・写真:向坂 文宏 氏
大手印刷会社、 広告代理店にて20年間、 家電/自動車/日用雑貨/化粧品/医薬品などメーカーを主なクライアントとして、多業種の店頭コミュニケーション施策を企画・実施。 現在は大学で教鞭を取りがら、POP研究家として店頭ツールの事例研究や、講演活動、コンサルティングを行っている。月刊販促会議(宣伝会議)にて最新店頭ツールのレポートを連載中。日本プロモーショナル・マーケティング協会参与。プロモーショナル・マーケター。VMDインストラクター。桜美林大学准教授。 相模女子大学非常勤講師。