需要ひろがる!リボードや強化段ボールの最新活用事例
社会のエコ意識が高まるにつれ、店頭でのプロモーションの在り方や、プロモーションツールに使用される素材も大きく変化をした。例えば、多くの情報はWEBで見られるため紙のパンフレットやカタログが減少する一方で、POP広告の素材は、樹脂や金属、木材などから紙へと変わってきている。
今まで樹脂や金属、木材を使用した什器には、耐久性や強度などが求められてきた。例えば乾電池や飲料用の什器は、陳列する商品の総重量が相当なものとなるため、金属等で構造を強固なものにする必要があった。しかし近年では、紙の加工技術や什器の設計技術が向上したことで、紙製の什器でも十分な強度を保っているものも多く見られるようになった。さらに、紙でありながらも強度のあるリボードや強化段ボールを使用することで、イベントブースなどの大きな構造物や、家具などを紙で制作する事例も登場している。今後は、ますます多くの紙製のプロモーションツールが登場するだろう。
今回は、紙でありながら強い強度を持っているリボードや強化段ボールに注目し、実際に活用されている事例を見つつ、これからの紙の可能性を考えてみたい。
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「リボード」「強化段ボール」とは
リボードはヨーロッパで誕生した100%紙製のボードだ。紙製であるため軽量であるものの、重量物にも耐えられる強度を持つ。また表面はフラットになっており、印刷適正が非常に高い。曲線やカットアウトなどの加工も容易だ。強化段ボールは、一般の段ボールに比べ芯を挟んでいる表面と裏面のライナと呼ばれる紙が固く、強い強度をもった段ボールだ。こちらも紙製なので軽い上に、耐水性なども高まっている。一般の段ボールと強化段ボールの中間の強度の段ボールなどもあり、用途により使い分けられる。
「リボード」「強化段ボール」どちらも紙製のため100%リサイクル可能だ。人にも環境にも配慮された素材であり、これからの社会のニーズにも合致した素材であると言える。
【Re-board[リボード]ディスプレイ】
https://www.links-net.co.jp/service/reboard_display/
(画像①:リボードを使用した販促ツール例)
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1. 段ボールの店頭サインへの活用
(画像②:インバウンド客向けのサイン)
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店頭にて買い物に必要な情報を告知する店頭サインは、頻繁に入れ替えるものではないため、耐久性の高い素材で作られることが多い。しかし最近では、段ボールが使用されている例を見かける。耐久性が確保できるのであれば、紙製にすることのメリットは大きい。比較的大きな告知物を作成しても軽量であるため、土台さえしっかりしていれば転倒の危険性も少なく、買い物客が当たって怪我をするという心配も軽減される。紙製のため、告知内容の更新やリニューアルが必要な際の制作コストも低く、常に新しい情報を掲出できる。
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2. VPやPPのディスプレイの素材として
(画像③:VPやPPのディスプレイの素材として活用。シンプルな構造で大きなモチーフを表現できる)
(画像④:ディスプレイを立体的に演出するライザー(小さな台)として使用)
店舗の入り口や、店内の各コーナー入り口に作られるVP(ビジュアルプレゼンテーション)やPP(ポイントプレゼンテーション)などのディスプレイの素材でも、リボードが使われる事例を多く見かけるようになった。遠方からでも目立つように比較的大きな造作物の多いディスプレイにおいて、大きな平面を歪みなく作り出せ、また発色の良いリボードは扱いやすい素材だ。普段は木などで制作することの多いパネルなども、リボードで代替可能だろう。また、紙で大型のディスプレイを制作する際に、今までは自立させるために複雑な構造設計が必要だったかもしれないが、リボードであれば板を組み合わせるようなシンプルな構造で実現できる。組立作業や梱包の手間も軽減できそうだ。この手軽さもリボードを使用する大きなメリットだ。
最近ではディスプレイのライザー(立体的な展示を行うための小さな台)の素材としてもリボードが使用されている。リボードの素朴な素材感を生かしたライザーは、展示全体へエコな雰囲気を醸し出す。通常はライザーには木箱や樹脂の箱が使われることが多いが、新たな素材の選択肢が増えたような感じだ。
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3. 商品の陳列什器への活用
(画像⑤上:タイガー魔法瓶「Energetic Tumbler」フロア什器、画像⑥下:ネイチャーパブリック「インテンス マルチ アンプルバーム」カウンター什器)
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リボードが商品の陳列什器に使用される事例も増えてきた。画像⑤は、リボードによって制作されたマグボトルのフロア什器と、美容液のカウンター什器だ。マグボトルはアウトドアでの使用をコンセプトとしており、美容液は自然派スキンケアブランドの物。どちらも、リボードの質感や断面の形状をデザインに取り込み、オーガニックな雰囲気を演出することで商品特徴を分かりやすく表現している。最近の買い物のキーワードである「エシカル消費(社会的な課題解決を考えたり、課題解決に取り組む商品を応援しながら行う消費活動)」を意識した商品の訴求には非常に相性の良い素材であると言える。
リボードを活用した什器を考えるとき、素材の「厚さ」がネックとなり、商品の陳列スペースを圧迫してしまうことがある。上記の事例はこの「厚さ」を逆手に取り、断面を敢えて見せるようにデザインすることでインパクトのある印象を持たせている。リボードを活用した什器をデザインする際は、こうした素材の特徴を活かした構造を導き出すこともポイントとなる。
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4. エコ活動のシンボルとしての什器への使用
(画像⑥:ハンズ「Hand Marks」販売什器。ラフな雰囲気が商品特性とマッチしている)
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(画像⑦:各種リサイクルボックスへのリボードの活用)
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また、企業がエコ活動を行う際に、そのシンボルとなるような什器やディスプレイの素材としてリボードを選択するのは、さらに相性が良い。バラエティストアのハンズでは、様々な商品を製造する際に排出され廃棄される木片や布片などの端材を、「素材」として再利用してもらうために「Hand Marks」の商品名で販売している(画像⑥)。モノ作りを応援してくれるハンズらしいオリジナル商品で、簡易な商品パッケージからもエコ活動への強い思いが感じられる。この商品の什器にもリボードが採用されている。
この什器も、カットされた板の断面にあえて何の処理もせず、芯材がむき出しに見えるようになっている。印刷もあえて鮮やかな印刷表現などはせず、リボードの素材感を活かしたシンプルなものとしている。什器だけ見ると、まだまだ加工途中の未完成品のような印象なのだが、この雰囲気が「Hand Marks」のコンセプトと合致しているのだ。
今後、メーカーも小売業も今まで以上にエコ活動に力を入れていくだろう。店頭に設置された商品の容器などのリサイクルボックスの存在も、今では当たり前のものとなった(画像⑦)。リサイクルボックスの素材も当然のようにエコを意識したものが使われる。リボードや強化段ボールは、こうした施策の定番の素材にもなりそうだ。
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5. 店舗などの備品への活用
(画像⑧:書店の幼児コーナーの机と椅子)
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最後に、店舗の備品への活用を紹介する。画像⑧は、書店の幼児コーナーに設置された、知育玩具などの体験スペースの机と椅子である。この机と椅子がリボードと強化段ボール製だ。紙製であるものの、さすがの強固さであり、幼児の予測が難しい荒い使い方にも十分に耐えられる。また軽量であるため幼児にも扱いが簡単であり、さらに木製の家具に比べると素材が柔らかなので怪我の心配も少ない。改めて考えると、幼児向けの備品の素材として最適なのではないかとも思えてしまう。
リボードや強化段ボールの実用性は、什器などの素材としてだけでなく、こうしたインテリアやエクステリアでも認められている。冒頭でも触れたが、最近のビジネスショーでは紙の可能性を訴求するために、イベントブースを全てリボードと強化段ボールで制作している企業も登場している。中には木製と紙製の全く同じデザインの二つのイベントブースを作成し、強度に差が無いことを実証する試みもあった。まだまだ試行錯誤をしている点もあるものの素材の可能性としては誰もが認めるところであり、さらに活用の場が広がっていきそうだ。
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時代の要請として、今後も紙製のPOP広告は増えていく。リボードや強化段ボールは、そうした流れをさらに加速させる素材であるとも言える。積極的な使用を考えるべき素材であることは間違いないが、さらに素材の魅力を引き出した様々な工夫や事例が登場することを期待している。
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文・写真:向坂 文宏 氏
大手印刷会社、 広告代理店にて20年間、 家電/自動車/日用雑貨/化粧品/医薬品などメーカーを主なクライアントとして、多業種の店頭コミュニケーション施策を企画・実施。 現在は大学で教鞭を取りがら、POP研究家として店頭販促ツールの事例研究や、講演活動、コンサルティングを行っている。月刊販促会議(宣伝会議)にて最新店頭販促ツールのレポートを連載中。日本プロモーショナル・マーケティング協会参与。プロモーショナル・マーケター。VMDインストラクター。桜美林大学准教授。 相模女子大学非常勤講師。
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