特殊印刷を使用した、面白ギミック
いよいよ店頭でも、オンライン施策とオフライン施策を融合させた店頭ツール企画を多く見るようになってきた(下記事例①~③)。買い物客の購買行動が、ネット通販やWEB上の商品情報、SNSなどを介した口コミ、リアルな場所での商品の確認や接客など、オンとオフを自由自在に行き来するようになったということだと思う。身近になったデジタル手法は、リアルな場である店頭においても、買い物客へ様々な便益を提供してくれる。
事例① デザインを自由にカスタマイズできるボールペン什器。店頭のQRコードからアクセスしたサイトでカスタマイズのシミュレーションができる。
事例② 店頭からQRコードでWEBムービーへ誘引する。
事例③ POPサイネージでも、カリスマユーチューバーや、カリスマ販売員を活用し、アテンション効果を高めている。
POP広告が販売促進の一つの手法として脚光を浴びるようになってから70年が経とうとしているが、リアルな場所ならではのコミュニケーションとして今までも様々なアイデアが登場してきた。あえて今回は、アナログならではの伝え方にもあらためて注目し、中でも「特殊印刷」を上手く活用した事例を紹介したいと思う。
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① 光エステを疑似体験できるアイデア
写真のツールは、最近、急速に売り場を広げている光エステ器の体験什器だ。機器を肌に当てフラッシュを光らせると、毛先に熱エネルギーを与えてムダ毛を処理する仕組みであり、自宅でも気軽にエステが行なえると人気の商品だ。ただ、店頭で自分の肌に当てて効果を試してみるわけにもいかない。そこで登場したのが、特殊印刷による脱毛体験の仕組みだ。
このツールは、足のイラスト上に体毛を模した黒ドットを表現しているが、この黒ドットが、熱を与えると透明になる感温インクで印刷されている。買い物客は、自分の肌の代わりにツール上の黒ドットへフラッシュを当てると、その跡が、脱毛をしたように無地に変わる、というものだ。実際に商品に触れられて試せるということは、リアル店舗で買い物を行う大きなメリットである。気軽に試すことのできない商品を、試せられるようにするギミックは、店頭ツールとして大いに意義があると考える。
ちなみに、店頭ツールの画像であるが、実は上段と下段で、異なったメーカーの展示物である。競合メーカーが偶然同じ施策を実施していたのは、このギミックが、光エステ商品をアピールするのに効果的であったということだろう。
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② ドライヤーの特徴を実感できるアイデア
この店頭ツールも感温印刷を活用した事例である。最近、高額なドライヤーが人気である。それぞれ特徴があり、マイナスイオン等の効果でプロの美容師のような髪の仕上がりになるなどとアピールをしている。画像のドライヤーは、髪の温度を感じ取り、温風と冷風を自動で切り替えてくれるという商品だ。髪は、あまり高温になると髪の成分が固まってしまいダメージを負うそうだ。この製品は自動で温風と冷風を切り替えることで髪をダメージから守ってくれる。
この温風と冷風を視覚化してくれるのが、このツールだ。黒色の円へ温風を当てると、その温度に反応して、円が赤色に変わる。しばらくして、円の温度が高くなると冷風に切り替わるのだが、冷風になると円が再び黒色に戻り、切り替わったことを教えてくれる。
このツールは主に販売員が接客に使っていた。口頭での説明では理解しにくくても、ドライヤーの風を当てて色が変わる様を見れば、商品特徴は一目瞭然だ。接客を受けられることも、またリアル店舗で買い物をするメリットである。その接客強化を助けている特殊印刷の事例であった。
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③ 自分の足のサイズを眺められるアイデア
温度により色の変わる液晶印刷を使ったツールである。商品は靴の中敷きであり、自分の足のサイズに丁度良い商品を選ぶためのツールだ。改めて考えると、自分の足のサイズを客観的に眺めるという機会はあまりない。液晶印刷部分へ足を乗せると、体温に反応し、自分の足形が残る。足をどかした後で、その足形と商品を比較することで、商品選びができるという仕組みだ。
靴であれば履き心地で商品を確認できるが、中敷きのサイズとなると、足を当ててみて見下ろしてみるしかなさそうだ。このツールは、そんな自分の足にサイズを客観的に観察できる優れモノだ。
今回紹介したツールは、どれもデジタル手法では訴求をしにくい、アナログならではの体感型のツールである。デジタル技術はこれからも進化をし続け、買い物客を驚かすような企画も登場するであろう。しかしながら改めて印刷の可能性を振り返り、今回のようなリアル店舗ならではの商品選びの場を提供していくことも、店頭ツールを考えるにあたり重要ではないかと感じている。
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文・写真:向坂 文宏 氏
大手印刷会社、 広告代理店にて20年間、 家電/自動車/日用雑貨/化粧品/医薬品などメーカーを主なクライアントとして、多業種の店頭コミュニケーション施策を企画・実施。 現在は大学で教鞭を取りがら、POP研究家として店頭販促ツールの事例研究や、講演活動、コンサルティングを行っている。月刊販促会議(宣伝会議)にて最新店頭販促ツールのレポートを連載中。日本プロモーショナル・マーケティング協会参与。プロモーショナル・マーケター。VMDインストラクター。桜美林大学准教授。 相模女子大学非常勤講師。
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