今、文具売り場が面白い!
「今、どの売り場を視察すると面白いですか?」という質問をされることがある。今まで様々な売り場を視察のポイントとして紹介してきたが、現在であれば「文房具売り場」と即答している。
最近の文房具売り場には、非常に多くの店頭販促ツールが並び、華やかである。
文房具市場は、近年はやや減少傾向である。それは生活の様々な場面にてデジタル化が進み、アナログである筆記具の需要を減らしているためである。しかし市場動向とは反対に、文具ブームも起きている。最も分かりやすい例が「文具女子」というコアなファン層の拡大であろう。最近はそうしたコアなファン層へ向けた付加価値商品も増えており、市場は縮小しているものの、売り場での競争は苛烈になっている。
こうした状況の中で、店頭での競争を勝ち抜くため、各メーカーの店頭販促ツールの役割が重要になった、そして、その結果として素晴らしい店頭販促ツール事例が増えているのだ。先日開催された店頭販促ツールの展示会「日本プロモーショナル・マーケティング協会展」でも文具カテゴリーへの出品数は増えており、素晴らしい企画も多かった。
今回は、最近の文具売り場での秀逸な店頭販促ツールと、その方向性を紹介したいと思う。
①生活提案型の売り場
ひとつのメーカーから非常に多くの商品が売られているのも文具売り場の特徴である。そのため、買い物客にとっては何を選べば良いのか分かりにくい売り場とも言える。買い物客が何を選べば良いのか、買い物客の視点に立って買い物をナビゲートする什器は、売り場にとって心強い存在だ。この画像の事例は、ターゲットである小中学生の勉強方法に着目し、勉強方法別に商品を選べる売り場づくりを行っている。紙によるユニット構造となっており、売り場の形に合わせた展示が行えるような工夫もされている。
② 構造や商品の置き方で新鮮さを打ち出す
什器の構造や商品の陳列方法を工夫し、売り場にて注目を集めている事例である。ペンをペン立てへ立てるなど、一般的な陳列方法ではなく、例えば化粧品の什器のような見栄えの構造としたり、今までにない商品の置き方が考えられている。文具は比較的低価格な商品群であるため、一つの店頭販促ツールにそれほどコストをかけられない。主な素材は紙であることが多く、限られた条件の中でどのような構造設計を行うかが企画のポイントの一つだ。その中でも、ユニの「ジェットストリーム エッジ」の展示台は秀逸である。二種類の展示台を展開しており、ひとつは三角柱の二面を使い商品を横向きに陳列するなど、斬新な構造で注目を集めていた。もう一つは、商品名でもある「エッジ」の印象をそのまま形にした樹脂製のトレーを用いたものである。インジェクション成型のパーツを作り、多くのロット数を成型することでコストを抑えている。商品の新発売以来、展示台が何度かリニューアルされたが、このパーツは継続して使用されており、店頭販促ツールの長期的な計画で使用する素材の幅を広げることに成功している。
③ 今までにない商品コンセプトで新しさを訴求
文具の固定観念を覆すことで、商品の差別化と同時に、店頭販促ツールの見栄えを新しくすることに成功している事例である。例えば、ペンのインクの色は黒、赤、青など原色系が多いが、そうしたインクへの固定観念を覆して「消炭」「花霞」「日向夏」などのモチーフ別に分類したものや、「チャコールブラック」「オリーブブラック」「インディゴブラック」など、黒だけで6種類をそろえたような商品である。またノートでも、紙質を変えることで書き心地別に製品を作り分けたものも登場した。こうした新しい視点での商品は、店頭販促ツールでも独特な世界観を持たせることができる。斬新な商品企画と店頭販促ツールのデザインが合致することで、他商品とは一線を画した売り場づくりが行えるという好例たちである。
④ 他ブランドとのコラボレーション企画
他のブランドとコラボレーションにより差別化を試みたものである。店頭販促ツールへコラボレーションしたブランドイメージを反映することで、文具売り場の中で異質な存在として目立たせている。普段は食品売り場や化粧品売り場に置かれているブランドが文具売り場へ登場することで、買い物客の興味を引かせるだけでなく、ターゲット像も絞りやすくなるため、店頭販促ツールの企画も行いやすい。
⑤ エシカル消費を意識した、循環型社会への提案
最後に、これからの循環型社会へ貢献する商品や店頭販促ツールの事例を紹介する。
「PENON」は、森林認証をされた木材を使用し、脱プラスチックやCO2の削減を目指しているエシカル文具のペンである。店頭には、替え芯をリサイクルするための返送用封筒も陳列されている。
ユニの人気ブランド「ジェットストリーム」でも、ウイスキーの熟成につかう樽を再利用した商品が発売されている。ウイスキーの樽には厳選されたオーク材が使用されており、非常に上品な雰囲気を持つ人気商品となっている。
また、イギリスの老舗筆記具ブランドの「ジョッター」でも、エシカル消費を意識した店頭プロモーションを展開している。クリスマスクラッカーを意識したパッケージをひねって開けるという期間限定商品だが、店頭販促ツールとパッケージのどちらもリサイクルを意識した紙製となっており、メーカーとしての環境への意識の高さを感じる
循環型社会へ対応していくことは、今後の店頭販促ツールに必要な考え方だ。商品も店頭販促ツールも、使用期間が終了すれば捨てられてしまう。だからこそ、環境に配慮した店頭販促ツールは、買い物客の心をつかむとともに、お店も安心して活用することができる。
以上のように、5つの企画の切り口にて店頭販促ツールを紹介したが、文具売り場にはまだまだ面白い企画が数多く展開されている。競争が厳しい売り場だからこそ、各メーカーや商品が切磋琢磨して企画をしているが、だからこそ、視察するときに参考となるヒントも多い。特にエシカル消費を意識した企画などは、この先、どの売り場でもテーマとなる課題であろう。
店頭販促ツールのアイデアに詰まったときなどは、文具売り場を視察することをお勧めする。最近の文具売り場へ足を運んだことのない方などは、ぜひ一度、視察へ出かけて欲しい。
文・写真:向坂 文宏 氏
大手印刷会社、 広告代理店にて20年間、 家電/自動車/日用雑貨/化粧品/医薬品などメーカーを主なクライアントとして、多業種の店頭コミュニケーション施策を企画・実施。 現在は大学で教鞭を取りがら、POP研究家として店頭販促ツールの事例研究や、講演活動、コンサルティングを行っている。月刊販促会議(宣伝会議)にて最新店頭販促ツールのレポートを連載中。日本プロモーショナル・マーケティング協会参与。プロモーショナル・マーケター。VMDインストラクター。桜美林大学准教授。 相模女子大学非常勤講師。
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