売り場の手間を軽減する、ストッカー什器たち
日々、売り場で働いている販売員の方々の一日は忙しい。朝は清掃などの開店準備から始まり、一日の目標などを共有する朝礼、品出し、POPなどの販促物の設置や提案型の売り場づくり、接客、レジ対応、商品補充、売り上げ確認、終礼、片付け、翌日の準備など、業務をざっと挙げるだけでも忙しさが想像できる。そして、これらの業務は接客をしながら行わなくてはならない。コロナ禍では、来客数も減少したが販売員数も減少した店舗も多いと聞き、店舗のオペレーションの効率化は必須な状況だ。
このような状況の中、セル日レジや無人店舗などIT技術を駆使した効率的な次世代の店舗運営が現実のものとなってきているが、一方で、販売員の手を煩わせることなく商品提供を行う店頭ツールも多く目にするようになった。例えば、サイネージを使用したカウンセリング機能付きの施策だ。
例えば、SM(スーパーマーケット)のワイン売り場に置かれた販売什器である。買い物客は、タッチディスプレイに表示された気になる商品名をタッチすることで、目の前の大型モニタへ商品開設を教示させることができる。
SMのワイン売り場に展開されたサイネージ付き什器
また、家電量販店のシェーバー売り場でも同様に、サイネージに票にされた質問に答えることで沢山のラインナップの中から自分に合った商品を選ぶことができる施策が見られる。
シェーバー売り場のカウンセリング機能付きサイネージ什器
これらは、忙しい販売員に代わって接客を行ってくれていると言える。店頭オペレーションの改善は、こうして店頭ツールでも可能なのだ。
特に売り場の業務効率化のために比較的簡易に導入が行えるのがストッカー什器ではないかと思う。商品をあらかじめ補充しておけば、買い物客が商品を手に取った後も自動的に手前へ商品を送り出してくれるツールだ。従来から売り場で見かけるものではあるが、店頭ツールの重要性としては、年々高まっているのではないだろうか。今回は、そんなストッカー什器として秀逸な事例をご紹介したい。
まずはキャンベルのスープ缶のストッカー什器である。売り場を非常に効率的に使用し、また上から下へ補充されている商品の見え方も美しい。商品の世界観までも表現されたストッカーである。缶や箱などのパッケージ商品の場合、買い物客の手に取られると、販売員が奥から手前へ商品を出さなくてはならないが、ストッカーであればそのような手間がかからない。
キャンベルスープのストッカー什器
次はSMの缶飲料の売り場である。メーカーごとに売り場のフォーマットに合わせたストッカーが作られている。上下二段の構造となっており、上段の手前から商品を補充すると奥へ商品が転がっていき、下段奥から手前へ出てくる仕組みである。在庫状況もひと目で分かり、商品補充のタイミングも計りやすい。
缶飲料のストッカー什器。鉄製で耐久性は高い。
また、ストッカー什器の素材も様々である。鉄や樹脂などを使用し、ある程度の耐久性があるものから、ひとつの商戦期やキャンペーンのための紙製のものもある。特に紙製のものは、迅速な売り場づくりやテストマーケティングなどを迅速に行えそうだ。
紙製のストッカー什器たち。新製品から老舗商品まで、様々な目的で作られている。
今や売り場の業務効率の改善は待った無しの状況だ。商品を納品したアウターカートンをそのまま販売什器として使える施策や、パッケージの表裏を同じデザインにし商品陳列を素早く行えるようなアイデアなど、様々なことが行われてきている。店頭ツールを企画するときに、いかに売り場の業務に寄り添い、業務効率向上に貢献していくか、そのような視点での企画は今後ますます重要視されていく。そして、これらの課題解決は流行語にもなっている“店頭DX”などの最新のIT技術だけが担うものではなく、店頭什器などのアイデアが解決できることも多くあると感じている。
文・写真:向坂 文宏 氏
大手印刷会社、 広告代理店にて20年間、 家電/自動車/日用雑貨/化粧品/医薬品などメーカーを主なクライアントとして、多業種の店頭コミュニケーション施策を企画・実施。 現在は大学で教鞭を取りがら、POP研究家として店頭ツールの事例研究や、講演活動、コンサルティングを行っている。月刊販促会議(宣伝会議)にて最新店頭ツールのレポートを連載中。日本プロモーショナル・マーケティング協会参与。プロモーショナル・マーケター。VMDインストラクター。桜美林大学准教授。 相模女子大学非常勤講師。
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