売り場づくりの色に注目!黄色編
売り場づくりのポイントの一つとして、「色の塊をつくる」というものがある。店頭にはパッケージデザインやPOP広告などにより様々な色があふれているため、売り場は特定の色でまとめてしまう方が視認性は高まるというものだ。実際に店頭で目立っている商品の売り場は、色で周囲と区別されているものが多い(写真①)。


(写真①:色の塊をつくることで目立つ売り場)
下記のコラムでも紹介したように、12月のクリスマス商戦が終了すると、売り場は一気にピンク色が増え、新春を迎える雰囲気となる。ピンクの売り場は卒業式や入学式シーズンに向けて広がっていき、買い物客の新生活需要を後押しする雰囲気づくりを行う(写真②)。
「お正月から春商戦へ ~様々な催事が続く売り場の注目ポイント~」
https://www.links-net.co.jp/column/2023newyear/

(写真②:春の新生活需要に向けてピンク色に変化する売り場)
最近ではグラデーションを多用した売り場づくりを目にする機会も増えている。売り場での色使いはメリハリのある単色が選ばれることが多かったが、ナイトケアシャンプーYOLUがグラデーションパッケージを基調とした売り場づくりが行われ始めてから、グラデーションをキーカラーとした売り場が増えてきた。単色で表現されることが多い売り場づくりにおいて、グラデーション表現がインパクトのある見栄えに繋がっていたことが要因かと思われる。Z世代をターゲットとした商品のパッケージにグラデーション表現が多いことも、売り場にグラデーション表現が広がった理由の一つだ。


(写真③:グラデーションが多用されているYOLUの売り場や、Z世代を意識したパッケージデザイン)
このように、「色」はいつも売り場づくりの重要な要素になっている。そして近年、「黄色」が様々な売り場でポイントとなる使われ方をしていることに気付いた。黄色は、12色相環の中でも光に近い色味のため、視認性が高く、注意を引き付ける色だ。そのため、輝く色のイメージから、歓喜や希望、光明といった前向きなイメージを想起させる。一方で、視認性の高さから信号機や標識での警告表示にも使用されている。またスズメバチなどの危険な生物などの色でもある。欧米では卑劣や臆病者といった意味合いもあるらしく、ポジティブとネガティブの二面性を持った色ともいえる。
ネガティブな性質も持ち合わせた色だからか、売り場づくりで使用される色としては少数派であった印象だ。しかし最近では、売り場に埋もれずに目立つ色であることからか、黄色のメリットを生かし、視認性を高めることに特化したような売り場づくりに活用されている例をよく見かけるようになった。
今回は、こうした「黄色」の使い方の秀逸な売り場の事例を通して、色が売り場づくりに与える影響について考えてみたい。
お正月商戦も、黄色が目立つ


(写真④:スーパーの年末年始の食品売り場)
年末年始の売り場づくりと言えば、紅白を中心とした色使いや、メタリック特殊用紙を使用した金色による、吉兆を表現した色使いが多い。しかし、今年の年初の売り場を見てみると、店舗による黄色のアテンションPOPが多く見られた。様々な食品などのパッケージが紅白のイメージとなる中で、店舗からの告知がひときわ目立つ。こうしたアテンションPOPも紅白イメージだと、売り場の中に埋もれて見にくかったかもしれない。アテンションPOPを黄色にし、商品と色の差別化することで視認性を高めた事例だといえる。
目を引く家電量販店の黄色の塊


(写真⑤:家電量販店での黄色による売り場づくり)
家電量販店でも、黄色はひときわ目を引く。今まで、家電量販店で黄色をブランドカラーとして使用していたのは、主にカメラ売り場のニコンコーナーくらいであっただろうか。多くは、先進のAV機器をイメージする黒系や、白物家電売り場などで清涼感のある青系、調理家電売り場での食欲をそそるような暖色系、理美容家電売り場での白やピンク系などが多い印象だ。その意味では、黄色は他のブランドと被りにくい色でもあった。しかし最近では、新興メーカーや新商品の訴求に積極的に黄色が使われている。
例えば、高圧洗浄機で有名なケルヒャーは、売り場を黄色に染めることで認知を獲得した。翻訳機のポケトークも、店舗内で黄色の展示什器を使用した他箇所展開をしており、どこに置かれていてもすぐに気づく存在感がある。他にも新商品の展示に黄色を選ぶことで、売り場に埋もれることなくアピールしている様々な商品が登場している。
家電量販店で黄色が目立つのは、他のメーカーやブランドのイメージが付いていないために使いやすいという理由がありそうだ。
新商品も目立つ、黄色の空間


(写真⑥:日用雑貨売り場での黄色による売り場づくり)
日用品や雑貨売り場でも最近は黄色の存在感が強い。ドントパニックは、老眼鏡の選び方をディスプレイによって説明する意欲的な什器を黄色で展開している。パイロットは、蛍光ペンの新製品を、蛍光ペンらしい黄色で、NOLTYは、新しい手帳売り場を黄色で展開していた。どの売り場も、遠方からでもその存在がはっきりと分かる。
売り場以外でも高い視認性

(写真⑦:キャンペーン告知のための黄色を使用したアテンション)
また、店舗の通路を移動中にも、黄色の什器が目に入ってきた。キャンペーンの告知物だが、売り場ではない場所でも黄色は非常に目立つ。危険を注意喚起する色でもあるため、店舗側も使う機会の少ない色なのではないかと思う。とにかく什器を目立たせたいとき、黄色を採用すれば認知だけはしっかりと獲得できそうだ。
様々な売り場で差異化に成功


(写真⑧:コスメ売り場での黄色を使用した商品展示)


(写真⑨:食品売り場での黄色を使った売り場づくり)
改めて黄色の売り場を意識すると、コスメ売り場(写真⑧)や食品売り場(写真⑨)でも、まるでスポットライトを浴びているかのうように、売り場が浮き上がって見える。新商品や、いままで売り場を獲得できていなかった商品などの売り場のキーカラーとして黄色を選ぶと、目立つことは間違いないようだ。ただし、目立つだけではブランドイメージが伝わらないし、商品力が無くてはリピート購入が期待できないため商品は売り場から消えてしまう。
店頭訴求で優先すべき目的が「目立つ」「視認性を高める」ことだけであれば、基調色として黄色を選択することは有効な手段となりそうだ。
海外でもよく目にする、黄色のアテンションツール


(写真⑩:海外のスーパーマーケットの、黄色を使用したアテンション)
海外の店舗でも、ディスカウントストア内では至るところに黄色の告知物が使われていた(写真⑩)。改めて考えると、ディスカウントストアではブランドイメージよりも、価格訴求が第一なので、お得さが「目立つ」ことを最優先に考えるのであれば、理にかなった色の選択だったのだろう。視認性だけを考えると、黄色の使用は世界共通なのかもしれない。
今回は、最近目に留まった「黄色の売り場」について改めて振り返ってみた。当初の想定以上に多くの売り場で使用されており、『目立つ』ことへのこだわりが感じられる事例が多かった。先述しているように、安易に什器などのデザインに黄色を用いると、商品の魅力が十分に伝わらない可能性もあるが、黄色の売り場のインパクトの強さについては、表現の一つの選択肢として意識しておいても良いだろう。

文・写真:向坂 文宏 氏
大手印刷会社、 広告代理店にて20年間、 家電/自動車/日用雑貨/化粧品/医薬品などメーカーを主なクライアントとして、多業種の店頭コミュニケーション施策を企画・実施。 現在は大学で教鞭を取りがら、POP研究家として店頭販促ツールの事例研究や、講演活動、コンサルティングを行っている。月刊販促会議(宣伝会議)にて最新店頭販促ツールのレポートを連載中。日本プロモーショナル・マーケティング協会参与。プロモーショナル・マーケター。VMDインストラクター。桜美林大学准教授。 相模女子大学非常勤講師。
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